Vici症候群はオートファジー関連遺伝子の
機能低下による多様な症状をもつ疾患です。
概要
Vici症候群は、脳梁欠損、眼・皮膚白色症、重度発達遅滞、易感染性、心筋症を呈するまれな常染色体潜性遺伝性疾患で、EPG5遺伝子の異常により発症します。
疫学
世界で100名以上、日本では10名以上の報告がありますが、正確な発症頻度は不明です。
原因
18番染色体(18q12.3)にあるEPG5の機能不全により発症します。EPG5はオートファジー関連遺伝子で、オートファゴソームとライソゾームの融合に関与します。そのため、オートファジー機能不全により細胞の維持管理機構が破綻し、全身の様々な臓器に影響が生じます。
症状
Vici症候群の児は新生児期から筋緊張低下があり、その後の発達は大きく遅延します。座位や歩行の獲得はほぼみられず、言語の獲得もみられないのが一般的です。脳MRI検査では全例に脳梁欠損を認めます。出生時の頭囲は正常なことが多いですが、進行性の小頭症を示し、発達の退行を示すことがあります。
その他の症状として、眼・皮膚白色症、免疫機能の障害による易感染性、心筋症、白内障、てんかんなどが知られています。出生後から色白なことが多いです。免疫機能の障害のため、繰り返す感染症、特に呼吸器感染症に注意が必要になります。心筋症は進行する可能性があり、定期的な検査が必要です。
オートファジーは全ての細胞や臓器において重要な役割を果たしているので、多彩な症状を示すことが特徴になります。
診断方法
確定診断には遺伝子検査が必要です。Vici症候群の遺伝子検査は現在健康保険に収載されていないため、研究対応となります。
鑑別診断
脳梁欠損は様々な疾患に合併します。また、Vici症候群と症状が重なるいくつかの稀な疾患が存在するので、症状だけからの診断は困難であり、確定診断には遺伝子検査が必要です。
診断基準
現在、Vici症候群の確立した診断基準はありません。
確実例:Vici症候群の主たる症状(発達遅滞、脳梁欠損、眼・皮膚白色症、易感染性、心筋症、白内障)を認め、EPG5遺伝子の両方のアレルに病因となる変異が同定されると確定診断になります。発達遅滞と脳梁欠損は必須の症状ですが、それ以外の症状は必ずしも認めないこともあります。また、年齢と共に出現し、乳児期には認めないこともあるので、注意が必要です。
疑い例:Vici症候群と共通した症状を認めても、EPG5遺伝子に変異が同定されない場合は疑い例となります。